『猛スピードで母は』
2007年 10月 28日
猛スピードで母は (文春文庫)長嶋 有 / / 文藝春秋
スコア選択: ★★★
『サイドカーに犬』と表題の『猛スピードで母は』の二作品が収録されている。
どちらも激しいストーリーではなく、淡々とした調子で、小学生からの目線で大人の女性との交流を描いている。
どちらの作品も、登場人物の印象がとても似ている。
まるで同じ登場人物みたいだ。
主人公の小学生は、流される性格で、大人の都合に逆らわない、物わかりの良い子だ。
服従的と言ってもいいかもしれない。
彼らと相対する大人の女は、世間の枠にはまりきれていない、ちょっと浮世離れして見える。
が、最終的に主人公の目線が行き着くところはそれぞれ別だ。
『サイドカー〜』の主人公・カオルは、父の愛人である洋子との交流を経ても、特に何の変化も見られない。
束縛されることと依存することの心地よさを、大人になっても持ち続けている。
自らの意思で走ることよりも、誰かに引っ張ってもらうことを、彼女は選択している。
洋子も、ひょうひょうとしてはいるが、逆らうようなことがない。
カオルの父の全てを知りつつ受け入れている。
ずっとカオルの父を待ち続けているんじゃないだろうか。
『猛スピード〜』では、主人公・慎の、母に対する思いが徐々に変化してゆく。
自分の意志が何より大切な母がほんとうは家族を大切に思っているということを知り、また、母親を一人間として認識してゆく。
同時に、母に自我を見せることで慎は自分も一人間だということを自覚する。
二人で一人、のような関係が、お互いが自立して助け合う仲間意識のような親子に変わってゆく。
二人の未来はきっと明るい。
二作とも、子供の成長について描いているようで、実は、大人の女像を描こうとしているように思う。
愛する男のために生きる洋子と、家族のために生きる母と。
で、二作とも男がしょうがない人なのは何故か。作者の自虐?
『サイドカー〜』の本文ラスト一行の意味がどうしてもわからない。
何が「そろそろ」なのだろう。
# by younido | 2007-10-28 19:42 | 小説













